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J.エネビシ著『現代モンゴル音楽史Ⅰ』

J.エネビシ『現代モンゴル音楽史Ⅰ』、文化芸術大学文化学部、ウランバートル、2011年(Ж.Энэбиш, Орчин цагийн монголын хөгжмийн түүх, Улаанбаатар, 2011. )

著者:J.エネビシ
 芸術学博士、音楽学者、評論家。この20年間に、伝統音楽および現代音楽の歴史、理論の諸問題に関して、『音楽の伝統の革新』1991年、『モンゴル人の歴史文化事典』共著2004年、『チンギス・ハーン辞典』共著2006年、『遊牧民の音楽概念における潜在意識』共著2006年、『モンゴル音楽の口承と記譜の相互関係』2007年、『芸能評論、すなわち精霊を喚起するイラクサなり』2007年、『20世紀モンゴル音楽芸術評論の思想概観』2008年、『20世紀モンゴル音楽研究論文選集』監修2008年、『音楽学(科学アカデミー叢書22)』共著2010年、『文化芸術研究』共著2010年など、単著および共著による本を出し、30以上の修士、博士論文を指導し、無形文化財保護を主題とした10本以上のドキュメンタリー番組の制作に携わった。馬頭琴、オルティン・ドー、ホーミー、民族楽器オーケストラに関する大統領令の発案の発起人の一人を務めた。彼の研究はロシア、中国、韓国、アメリカでも出版されている。現在遊牧文明国際研究所研究員。

目次
前書き
推薦者前書き
序文
第1部
人民革命期における音楽作品(1921-1940)
第1章 専門音楽教育の開始、作品、音楽教育機関の発足
第2章 革命歌の旋律と歌詞の伝統、革新
第3章 モンゴル最初の作曲家、音楽学者でありプロフェッショナル音楽芸術の礎を築いたM.ドガルジャブ
第2部
社会主義建設期における音楽作品(1941-1971)
第1章 大衆歌
第2章 大規模な音楽作品
第3章 声楽作品
第4章 独奏、室内楽作品
第5章 吹奏楽、軽音楽
第6章 劇音楽、映画音楽
第7章 音楽批評

結語
参考文献

序文 20世紀のモンゴル国の伝統音楽と現代音楽のイントネーション、リズム、対位法の書法の対立
 現代モンゴル国の作曲家達は、よく知られた民謡の旋律や、語り物の音楽、伝統楽器の旋律を引用したり、編曲したり、変容させるというより、西洋音楽の形式を全て習得し、その基礎の上に民族の作曲家の流派、国民音楽を形作ってきた。
 彼らはその国民音楽を形成するに当たり、一方でソ連の作曲界の社会主義リアリズムの豊富な経験、あるいは西洋音楽の大作曲家による一般的な技法、つまり対位法や書法に学び、他方では5音音階の旋法である単旋律の伝統的旋律や遊牧民独特の即興性、その場にある物事を表現する民族音楽の独自性に立脚していると言えることが、これらに関する我が国の研究によって明らかにされている。
 この序論ではモンゴルの作曲家達が遊牧民の口承の伝統的音楽にどの程度向き合い、それを新時代の音楽作品にどの程度利用されてきたのか、その技法について民族の音楽の伝統と革新、継承の問題として私自身の考察を述べてみよう。
 作曲家で指揮者でもあったJ.チョローン(国家賞受賞、人民芸術家/1928-1996)は彼自身モンゴル初のヴァイオリン奏者の一人(なんと独学で修めた)として1949年、オーケストラとの協奏的作品《ヴァイオリン二重奏曲》を、1951年には同じく協奏的作品《二つの民謡主題による変奏的小品》を書いた。これらはモンゴルにおけるヴァイオリンのための作品の嚆矢であった。
 チョローンは前者の作品には《ゴーリンゴー》、《バータルツォグトの姻族》という2つの民謡の旋律を、後者には《丸い蹄の褐色馬》、《二心》という2つの民謡の旋律をホモフォニー(和声音楽)の技法でアレンジした。言い換えれば、彼は上記の2つの作品で、緩急2種の民謡旋律を主題として利用したのである。
 ここで《二つの民謡主題による変奏的小品》について若干の楽曲分析を試みる。作曲者は作品の形式として変奏曲を選んで、ヴァイオリンとオーケストラと言う編成に合わせてオーケストレーションを施した。これは当時としては大変な冒険であった。
 なぜなら、まず第一に当時わが国の音楽界に西洋のオーケストラ、中でも西洋の弦楽器が入って来てまだ間もなかったこと。第二に、その演奏技法の伝統は全く確立していなかったこと。第三にそのような楽器のためにモンゴル人によって書かれた作品は全く存在しなかったこと。第四にヴァイオリンそのものの高い表現力、豊かなテクニックを引き出すために、楽器に対する研究、演奏法の習得をこれからしなければならなかったことによる。
 チョローンは非常に短期間でヴァイオリンを習得し、ヨーロッパおよびソ連の作品を演奏できるようになった。このことは《変奏的小品》を作曲するうえでの基礎となった。
 《変奏的小品》の形式的普遍性、律動の独自性、優れた管弦楽法、国民性に寄り添った音使い、これらすべてを、この曲の楽曲構成、拍子、調性に対する分析により明らかにすることができる。
 この曲の構成は、《丸い蹄の褐色馬》の主題をA、《二心》の主題をB、作曲者自身によるブリッジ主題をCとすると、A(Andante),A1(Piu mosso),C(ここまでD-dur),B(Allegro),B1(Meno mosso Accelerando),B2, B3(Allegro)(ここまでA-moll),A1(Andante),C(ここまでD-dur)となる。
 上記分析からすると、モンゴル人がヴァイオリンと言う楽器の表現力の豊かな可能性をモンゴル的な旋律を用いていかに引き出すことができるかと言う課題に対し、チョローンがうまく解答を導き出していることがわかる。他方、5音音階の理論というモンゴル音楽の表現語法の基礎を変奏曲という形式を借りて豊かにしている。こうして独奏、管弦楽の相互関係、各変奏の受け渡し、展開、管弦楽法、調性関係、ヴァイオリンの表現力などの多くの重要な問題に対し、理論の裏打ちを忘れず、民族の独自性を保ちつつ解答を与えている。最も重要なのは、人口に膾炙した民謡の旋律をモンゴル人の耳なじみのある形にとどまらない楽器法やホモフォニー形式により高い芸術性を担保し、聴衆の美的共感を呼ぶ国民的作品となしえていることである。ここに彼の革新者としての心があるのである。
 我が国の作曲家たちが新時代の作品を書くに当たり、民間に伝承されているオルティン・ドー、ボギン・ドー等の民謡を引用するだけでなく、革命歌の旋律も利用した例がいくつもある。そのような作品の一例が作曲家Ts.ナムスライジャブ(人民芸術家、国家賞受賞/1927-1987)による管弦楽作品《革命の英雄的行進曲》である。ナムスライジャブはこの作品に《キャフタ砦》、《幾年》、《薄黄色の太陽》などの有名な革命歌の旋律を利用し、行進曲の新しい形式を作り上げた。
 モンゴル国社会の生活を音楽により高らかに歌い上げた次の段階の大規模作品が《わが祖国》と題されたモンゴル初の交響曲である。交響曲《わが祖国》は人民芸術家で国家賞を2度にわたり受賞したL.ムルドルジ(1919-1996)により1957年にモスクワ音楽院作曲科の卒業作品として書かれた。この交響曲は4楽章制で、楽章ごとに速度、強弱、展開が、古典的交響曲の形式にのっとって構成されている。《わが祖国》はモンゴル人民の独立、自由のための闘争、勝利、栄光、苦悩を1つにまとめ上げた新時代の音楽史の金字塔であると言えるだろう。
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Author:Yapony Bagsh
Welcome to the world of Mongolian music! I've studied Mongolian language and musical culture in Ulaanbaatar(the capital of Mongolia) for one year. I hope you enjoy various music of Mongolic peoples.

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