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情熱的なモンゴル民謡の地方色の話

モンゴル国で聞いた話では、オルティン・ドーは全国区での大会もあるけれども、各県ごとにもコンテストが催されているそうです。そこでは、歌の巧拙のほかに、歌の地方色やその地方の方言の表現が明確になされているかどうかも審査対象に上るということでした。またモンゴル人の意識として、各地方、各部族の歌の特徴は、モンゴル人なら感覚的に分かる、という意識が今もって働いているということが書物などからは見て取れます。

 まず、確認しておくべきことは、オルティン・ドーは音楽的に、歌詞の言葉の影響を非常に強く受ける構造を持っているということです。エネビシ他著『音楽芸術研究(モンゴル国の科学シリーズ22巻)』(2009)によれば、オルティン・ドーのメロディーは細分化すると基本単位の「音節」と呼ばれるもので成り立っていて、これがメロディーの伸縮の基礎になります。歌詞の母音で終わる「開音節」、歌詞のアクセントのある子音で終わる「閉鎖音節」などによって特徴づけられています。これがどういう風に現れるかは、一般的にモンゴル語が子音の後に母音を必要とする言語的特徴に由来すると考えられています。
 なお歌は調子を整える「指向語(ハンダハ・ウグ)」(ゼー、ゼー・フー・ゼーなど意味のない語)によって曲がはじめられ、また閉じられます。
 
以上から、メロディーの作り方そのものが、言葉のアクセントや子音と母音の関係に依存していることがわかります。各方言によってオルティン・ドーは異なる特徴が表れるということがよく言われますが、方言は地方によって語彙、抑揚も含めて異なり、これが歌の差異にも影響しているのでしょう。

 次に音楽として地方に差があるのかという話です。C.ペッグ著『モンゴルの音楽、踊りと口承伝承』(2001)によると、中央ハルハの歌は幅の広さやそこに挿入される3オクターヴに及ぶショランハイというファルセットのような技巧、喉の駆使、修辞的にこっていて感情に訴える胸からの発生によって特徴づけられるとか(なんとこの項については三枝さんのお師匠デルゲル先生へのインタビューをもとに書かれています!)。また音の跳躍の幅が広く、テトラコードが共通音を伴って連続する音階による滑らかな音の動きはほとんどないと言います。
 ボルジギン・ハルハの歌(ダディスレンやノロヴバンザドが代表か)はモンゴル人には「繊細な」「正確な」「精密な」「洗練された」などと形容されます。声質の幅広さやファルセットの出現は中央ハルハに似ますが、跳躍が少なく、装飾音(チメグレル)が更に複雑になっていると言います。ノロヴバンザドのよく使ったホーロイ・ブンジグヌフという長2度に及ぶヴィブラートはボルジギン・ハルハに特徴的なものです。
 オイラート系諸部族と境を接する西ハルハの歌はアイザム・オルティン・ドーが多いのですが、中央ハルハに比べてメロディの動きの幅が限定されていて狭いのだそうです。
 その他のエスニックグループはハルハとはまた違う独自のレパートリーを持っています。
 オヴス県のドゥルベト族には部族の歌の書物『ドゥルベトの歌の青の書』があり、その歌は、隣接するバヤト族とは自らを区別して、それよりも旋律的装飾(ノガラー)を駆使してより美しく飾った歌である、とされます。更にハニーハン・ドゥルベト(旧ジャンジン・グン旗の領民)、オンギーンハン・ドゥルベト(旧バンディ・グン旗)に分けることができ、その2つの中でも音楽や歌詞が異なることもあるそうです(同じ曲が違う名前と歌詞で知られていたりなど)。
 東ハルハのハルデルやバヤン・バラートには社会主義以前の古い歌い方が残っていると言われています。ここの特徴は仏教の宗教音楽の影響が表れているということです。またリズムが強調され、人に訴えかけるような調子だそうです。
 西モンゴル全体の特徴としては、ファルセットなどの装飾的な歌い方がなく、喉元や声門を駆使する歌い方がないところもあるそうです。


『音楽芸術研究(モンゴル国の科学第22巻)』より
ザハチンの歌

ザハチンの歌は他のオイラート系諸部族のものと、方言が似ているために近い。特にオルティンドー(オイラートではアルヒニードーと呼ぶ)はそう。ボギンドー(アハルドーと呼ぶ)は若干の違いがある。

オリアンハイの歌
オイラートではオルティンドーのことをオトゥドーまたはアルヒニードーといい、ナーダムなど祭り、婚礼など宴の正式な席で歌うこの種の歌は部族毎に360あると言われています。このような宴の歌は替え歌を固く禁じられています。またよくある言い回しに「飲むより座れ、座るより歌え」というのがありオリアンハイ他のオイラートの歌に対する態度が表れています。
オリアンハイのオルティンドーは基本的にはオイラート全体のオルティンドーと同じで、基本的な旋律は歌詞の最初の一行もしくは二行に表れています。旋律の動きでは、跳躍や鋭い上向きのグリッサンドが重要な位置を占めます。旋律において名人芸的な装飾を施すのにはそれほど意を注がず、それよりも声の音色の使い分けを大切にします。このような特徴はオリアンハイのボギン・ド―にも表れます。
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Author:Yapony Bagsh
Welcome to the world of Mongolian music! I've studied Mongolian language and musical culture in Ulaanbaatar(the capital of Mongolia) for one year. I hope you enjoy various music of Mongolic peoples.

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